美術館に行くと様々なジャンルの絵が飾ってあります。
西洋絵画のジャンルには実はヒエラルキーが存在します。
ざっくり言うと、
「歴史画>肖像画>風俗画>風景画>静物画」の順に並び、それぞれ格式が異なるのです。
17世紀ごろに確立されたといわれます。
■歴史画が一番上
「神話・宗教・史実」を描いたものを「歴史画」と言います。
歴史画が一番上なのはなぜでしょうか?
・画家自身が神話や聖書などの主題を理解しなければならない
・適切な人物を適切な人数配置し、それぞれふさわしいポーズ・スタイル・感情を表現しなければならない
・古代建築などの考古学的な知識が要求される
といった理由からです。歴史画は描くのが難しいのです。
鑑賞者は歴史画を読み解く高い教養を持ち合わせているため、当然画家自身にも、彼らを満足させるだけの高い教養・様々な知識・技術・芸術的想像力が必要です。それゆえ格も高いのです。
■2番目が肖像画
歴史画の次に高いのが要人を描いた肖像画です。
・貴族や聖職者の偉大さを表現
・その人物がどのような人物であるかを正確に伝える
・その人物をどのように伝えたいかを汲み取る
これも、画家にとって一筋縄ではいきません。
あるがままの姿を正確に写実するだけではなく、その人物のあるべき姿を描かなければならないからです。
■3番目が風俗画
一般市民の生活を描いたものが風俗画です。
・格言や教訓が込められる
・正しい信仰生活へ導くための美徳悪徳を表現
一見すると当時の人々の日常の一コマですが、メッセージが込められているのです。
例えば、フェルメールの「紳士とワインを飲む女」では、
椅子には「肉欲」を表す楽器が置かれており、ワインを飲む女の目線の先に「節制」を象徴する馬勒(ばろく)を持つ女性が描かれ、肉欲への戒めが読み取れます。
プロテスタント社会のオランダでは特に人気を博したそうです。
風俗画に「飲酒」の場面が多いのは、オランダが欧州一の大酒飲みとして知られていたからです。
節制を意味しています。
■4番目が風景画
裕福な市民階級の家に飾るものとして風景画は愛されました。
・広大な自然を描くための技量が必要
・歴史画の風景にもなり基礎的な素養
といったものが画家に求められます。
17世紀ごろまで「目の前の現実の風景」を美しいとする美意識はあまりなかったようですが、
こちらも、この時代のオランダでは写実的な風景画、特に海景画は人気があったようです。
■最後に静物画
ヒエラルキーの一番下は静物画です。
・モノを正確に描くだけだから
理由は単純ですね。
ただしストーリーや教養を必要としないものの、シンボリズムはありました。
例えば、
「花」≒「人生の短さ」
「ドクロや砂時計」≒「時間の経過」
を象徴するものとして描かれていると言われています。
人生の儚さを意味する「ヴァニタス」という静物画のテーマが有名です。
★まとめ★
・西洋美術のジャンルはヒエラルキーが存在
・歴史画>肖像画>風俗画>風景画>静物画、の順に格が異なる
美術館に行ったときや絵画にふれた時に、ふと思い出してみてください。
それぞれのジャンルについて詳しく調べてみるとさらに面白いですよ!